お米を育てること

(写真:田植えから30日を過ぎた圃場の一例)


4月から始まった田んぼの準備、田植え、除草が一つ区切りつきました。

この4カ月は怒涛のような毎日を過ごし、肉体的・精神的にも余裕が無い時期が続いてます。

集中力が欠け、、迷惑をかけることも多々…(色々ごめん!)


それでも、主力メンバーを始め作業に携わってくれる力強い仲間の存在があったからこそ

何事もなく続けてこれたんだと思い、感謝しかありません。

怪我なく、集落に迷惑を欠けず日々の作業をこなし

喧嘩せず楽しく続ける為にも、決して楽ではない作業に向き合いながら

1年1年の経験を積み重ねていくことが、今僕らにできる最低限の勉強です。

それは、無農薬無施肥栽培を選択して、お米をつくっているから。

この選択の中で「決して楽ではない作業」の代表格と言っていいのが「除草」になります。

日々見回る中で「こんなに雑草生えてたっけか?」と目を疑う光景に何回頭を悩まされたことでしょうか。


『除草』=『草を取る』


この解釈は間違えではありませんが、『除草』を紐解くと実は草を取る以上に必要な工程が見え隠れしてきます。「なぜ取っても取っても草が生えるの?」という問いに対し、どのようにアプローチできるかが無農薬栽培の大きなポイントになります。(現在進行形)

草を除くことへの方法論を模索し続けるがあまり、草が生える原理や、除草しても草が減らない理由、強いては一般的な栽培方法の信憑性(例えば、無化学肥料や無施肥に中干しは必要?)などを考えることは重要です。


一般的な栽培方法はあくまでも”一般的”であって、全てを当てはめる必要はないはず。


「適地適作」と言葉があるように、その場所に存在する自然環境(水、土、気候など)について、栽培を通じ生産者なりの考えを深めていくことが、除草をはじめ無農薬栽培を楽しむ必要不可欠な時間だと考えます。


前置きが長くなりました…


これから、お話しする下記の除草履歴は2019年徳島県神山町で記録されたものになります。

(四国内での無農薬栽培には関連することが多々あるのでは?)

少しでも、参考になれば幸いです。

※中野式除草機は、正しい方法と水管理を経て初めて成果が見えてくるはずです。我流、これを使えば除草は楽勝!など安易な考えで使用すると、難しい結果になり兼ねないことをご承知ください(経験上のお知らせです)

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【中野式除草機2年目の経過報告】

<図:江田集落2019年度除草履歴>

補足除草とは、取り損ねた”ウリカワ”という雑草を手除草することです。

<写真:田植え後7日以内の除草時。コナギの赤ちゃんや、雑草の種が浮いてます>


<写真:1回目除草後の圃場。草が見え隠れする段階から丁寧に除草をかけました。>

<写真:田植えから3週間目。畔側は無除草地帯、条間も多少の取りこぼし(ウリカワ)が見られる>

(写真中央の雑草が”ウリカワ”。こやつを除くよう1回目の除草がとても重要)

土地によって、生えないところもあるのかな?江田集落はとても多い。

(写真:田植えから1カ月の圃場。ここは去年失敗した圃場。1.5回の中野式でもこれだけのクオリティが保てる。)


<無農薬栽培の日常>

僕らは、日々の栽培工程を3名のスタッフで行なっています。
現在は、自給自足の延長線でお米づくりをしています。
ちなみに3名とも仕事しながらの兼業です。


<栽培方法>

栽培期間中無施肥無農薬(苗は集落内で共同作業するため一度農薬を使用します)


<収穫量>

380kg-410kg(反収4.5俵)※1畝あたり27kg


<圃場面積>

1反4畝ほど(棚田の為、11枚がバラバラに点在してます)


<作業日並びに時間>

植 田:仕事前後の2時間弱・週一日の休み

兼 村:基本週一日の休み

千寿美:基本週一日の休み

ざっくり、こんな状況で作業してます。

どこにでもいるでしょ?こんな人たち(笑)

これから無農薬栽培を始める人に対して、少しでも参考になれば嬉しい。

<除草方法>

方 法:中野式除草機(1条式2機)
1条式を使用し、2畝(220㎡)を一人で条・株間合わせて6時間ぐらいが僕らの目安です。

回 数:2回+α(田植えから一週間以内に一回、それから10日以内にもう一度かける)

期 間:田植えから1カ月以内(1圃場につき20日以内に2回の除草が理想的)


僕らは、10枚の田んぼを転々とする為、作業効率はとても悪いです。

6月はほとんど休みがなく、朝夕30分だけでも除草し、コツコツ取り除いていきます。

上記の表をご覧いただけると、大まかな作業ペースはお分りいただけると思いますが、悪天候等の条件により、作業が後手に回ってしまうことがあり、スケジュール構成が上手くいきません。


補足です。

中耕除草機の場合は2畝で2〜3時間弱。しかし、8月まで隔週1回は施すため、回数は4回以上になります。時間的、肉体的には負担がとても多かった。
※作業負担よりも、雑草の旺盛な繁殖を見ると精神的にしんどかった。


<大切なこと>

除草というからには、草を除くことが目的になりがちですが綺麗に取ったって日頃の管理が疎かならすぐに草が生えるでしょう。しっかり草を取り除いた圃場を、適度な湛水で管理できる環境(畔作り)づくりこそ実はとても大切な要素を持っています。

水が溜まらない圃場作り(準備)は、その年の作業を大きく低下させる原因です。


<除草は田んぼの本質を学ばせてくれる>

無農薬でお米を作る他の友人を横目に見ると、「地の恵みに感謝して実ったものを有り難くいただく」という考え方に出くわせます。

僕も最初はこの考え方で有り難くお米をいただいてた時期がありました。
けど、いつからか「これで良いのか?」という疑問も生じ始めました。


一見聞こえは良いけど、裏を返せば「田んぼと向き合えていない」ということにも繋がります。そもそも、雑草に栄養を取られ弱々しい稲が実をつけたお米は本当に美味しいのでしょうか?除草もできないほど、田んぼに時間を割けていない裏返しにはならないのでしょうか?


などなど、除草という一つの作業から、お米を育てる上で大切な学びを幾つも授かったように思います。その中で、僕らが大切にしてきてる思いは「稲が気持ちよく成長する環境」を無理なく整えていくことです。

稲は、子供と同じ。
人の手無くして、生長は難しいはずです。

赤子のように毎日手をかける時間、稲が気持ちよく生長できる環境(水や風通しなど)を気にかける学びを除草から得ています。


毎日の水管理、獣害問題、雑草、そして病気。
このことを気にかけれるお米こそ、無農薬栽培のお米と言えるのではないでしょうか。


【考えること】

ここで言いたいのは、無農薬で栽培すること、除草方法の良し悪しを問うことではありません。僕らは、自分たちの暮らしにフィットし稲が気持ちよく成長できるお手伝いの在り方を選択し続け、その一つの考え方として中野式を書き留めています。


その土地や、生産者の生活リズム・圃場の大きさなどを考慮して、皆さんなりの選択を続けられたらいいですね。

田植えをして、水を与え、草を抜けば”お米”はできるでしょう。

特に、農薬や化成肥料に頼れば、一層お米の栽培は簡略化されてきす。

改めて申し上げておきますが、農薬や肥料の良し悪しを比較することは避けます。

これらを用いても、自信を持って栽培されている農家さんを否定したくありません。


が、生産者の背中を見ていればお米に向き合う姿勢は垣間見れます。


考えることを怠り、圃場にもいかずほったらかしのお米を目の当たりにして

そのお米を食べたいかと言われたら答えはNOです。


無農薬栽培でも、稲のことを考えず間違った方法で除草をしたり、水管理して

栽培したお米は食べたくはありません。


感謝や恵み以前の問題です。


毎日、稲のことを考え少しでも圃場に出て稲のことを思う気持ちは、日本人の深いところに眠る本質的なものだと考えています。

人に限らず”想う気持ち(気にかける気持ち)”と”感謝”を忘れたら、そこに待っているのは一つ一つただの”作業”になってしまうからです。

作業を通じたお米は、ただ”モノ”として扱われ、食べる感謝を感じることができませんね。


お米づくりを通じて思うことは、暮らしに纏わる本質的要素が、ものすごいスピードで失われ、簡易に考えられるようになっているなと感じること。


僕は、決してそんな生産過程や中途半端な寄り添い方はしたくありません。


こんな思いが年に数名でも届き、思いの大小はあるにせよ

”育てる”こととしっかり向き合える仲間と一緒に美味しいお米を育んでいきたいのが今一番の願いかもしれません


そして、秋にはみんなで美味しいを共有して、また次年度に向かって歩み始めたら

こんなに嬉しいことはありません。


中野式除草機という一つの手段を通じて

無農薬栽培の面白さと厳しさに触れさせてもらっています。


<最後に>

まとまりのない長文ご覧いただきありがとうございます!

色々書きました。いろんな方法があって、考え方があって。

個性がお米の味に変わって、その土地の味になって。

おこめづくりって面白いですよね。


長くなりましたが、今年の除草はこれにて終わり。

まさくん、千寿美さん本当にありがとう!

エタノホ

CONCEPT/くらしを耕す 「師匠との出会いから始まった原体験を次の世代に」 私たちは徳島県神山町にある江田という小さな集落で活動する団体です。 美しい棚田の風景を誇る集落で一組の夫婦と出会い お米づくりを中心とした”農ある暮らし”を実践しています。 地域との交流を経て学び得る知恵や技術を丁寧に受け継ぎ、 古き良き棚田の風景、暮らしを次の世代に承継していく活動です。

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